2013/04/24 :: 特別講義シリーズ#2 Michael Hansmeyer

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4月24日に、本展覧会のために、スイスの建築家マイケル・ハンスマイヤー氏のレクチャーが東京藝術大学中央棟第一講義室で行われました。直前の告知だったにも関わらず、予想を超えた沢山の方に参加いただきました。


タイトルは「Digital Grotesque(デジタル・グロテスク)」。レクチャーは、ハンスマイヤー氏の「具体的な参照のない形態」を作ることへの興味の話から始まります。


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細胞分裂の様子


自然界で形が作られるとき、最も小さな単位でおきている現象として細胞分裂を引用するハンスマイヤー氏。細胞分裂と同じくらいシンプルな操作をひたすら繰り返していくことで、思いもよらなかったような形態が生まれてくることへの興味について語ります。ハンスマイヤー氏の作品に見られる複雑で繊細な形態は、面を「ひっくり返す」という単純な操作を、立方体や円柱といったシンプルな立体をベースとして延々とドライブさせていくことで形成されています。ここで、「操作自体はあくまで定規とコンパスがあれば作図できるレベルの単純なものだが、コンピュータを使うことでその操作のスピードと解像度を人間の能力の及ばないところまであげることができる。結果としてより短時間で自分の興味をより深いところまで突き詰めていくことができた」という点をハンスマイヤー氏は強調します。



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立方体を出発点として、面を繰り返しひっくり返していくことで生成された形態


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円柱をベースにして現れてくる、新しい装飾様式を施されたような柱状の物体


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こうしてコンピュータ内で生成された複雑な立体は、レーザーカッターでミリ単位の断面を切り出し、積層していくことで現実世界で再現されます。


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THE SIXTH ORDER : MICHAEL HANSMEYER


近年では、ハンスマイヤー氏は柱という建築の構成要素から、より空間的なスケールへと作品の幅を広げています。その一例として、グロッタ(洞窟状の空間)をベースとした複数の形態が紹介されました。レクチャーのタイトルにあるグロテスクとは、古代ローマを起源とする異様な人物や動植物等に曲線模様をあしらった美術様式(wikiより)のことで、ハンスマイヤー氏のこの作品は、参照をしていないデザインであるにもかかわらず、変形した人物や動植物がモチーフになったかのような、まさにグロテスク様式の装飾があしらわれた洞窟のように見えてくることに、彼自身非常に興味があるといいます。


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洞窟状の空間をベースにした形態


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この複雑に入れ込んだ立体を再現するために、ハンスマイヤー氏は砂を固めて立体を再現する3Dプリンターを用いています。


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ここまで複雑な立体を、デジタル・ファブリケーションのような方法で、実際に制作までしてしまうことについて。会場からは伝統的な手仕事による彫刻の分野との棲み分けはどうなっていくのかという鋭い質問が投げかけられます。ハンスマイヤー氏は、「手仕事とデジタルファブリケーションは決して競合ではなく、お互いが影響しあいながら共存し、高めあうことができることができると信じている」と応対します。


マテリアライジング展では、この砂の3Dプリンターで制作した「グロッタ・シリーズ」の1つを、アジアで初公開する予定です。

コンピュテーショナル・デザインとデジタル・ファブリケーションが生んだ新しい様式の可能性を是非会場でご覧ください。