« mtrlzng II » | 時里 充・後藤寛敬・山口崇洋・久保田晃弘/多摩美術大学 メディア芸術コース

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久保田晃弘+田中新兵 『情報の密度 [素数版画]』

素材:Processing、クラフトロボ、銅版凹版刷り

素数をシーケンシャル(ラスター)に2次元に配置していくことで表われるテクスチャーを版画で表現した。次元(単位)のない情報に、版を介して次元を与えることで、密度を生成する。


久保田晃弘+田中新兵『111002-125331-150651@府中 [ガイガー版画]』

素材:Processing、クラフトロボ、塩ビ版凹版刷り

一本の連続した線の軌跡を、ガイガーカウンターによって計測された放射線が切断する。さまざまなものごとが折り畳まれていく日常の中の不連続点としての放射線。2011年10月2日(日)午後12時53分31秒から8000秒間の記録。府中市美術館公開制作室にて計測。


時里 充,後藤 寛敬 『手を使わない銅版画の練習』

素材:Processing、クラフトロボ、サーボモータ,銅版凹版刷り

手を使わない銅版画を始めた。もともとprocessingなどで制作していた作品、またサーボモータなどを動かし銅を削った。そしてプレス機を使用し印刷した習作集。


時里 充 『Study:iPhone broken』

素材:2014年7月まで使っていたiPhoneに凹版刷り

最近iPhoneの画面が割れてしまった。その割れたiPhoneの画面を版画用のプレス機を使い紙に転写した。プレスと同時にiPhoneは音を立て画面の割れは広がった。


山口崇洋 『Urbanized Typeface 3D』

素材:GPSデータ、プラスチック(ABS)

都市を移動してGPSデータを採取し、そのデータからタイプフェイスをデザインするプロジェクト《Urbanized Typeface》を3Dデータ化し3Dプリンタで出力したオブジェ。都市を移動した「行為」を彫刻にした作品。


 

山口崇洋『The Invisible Is Eternal』

素材:GPSデータ、銅板

パリのグラフィティ・アーティストZEVSが蓄光塗料で”The Invisible Is Eternal”(見えないものは永遠)とストリートに書き残したセンテンスを引用し、そのメッセージを巨大なグラフィティとして、東京にGPSデータで描いた作品《The Invisible Bombing》のデータを用いて銅版画を制作した。


 

[essay: 情報と物質とそのあいだ]

“メディア版画”

– 久保田晃弘/多摩美術大学 メディア芸術コース

パーソナル・カッティングマシン「クラフトロボ」のプランジャにダイヤモンドのニードルを取り付ける。
すると、カッティングマシンが版画マシンへと変化する。

あとはクラフトロボに数値データを送るだけで、手を使わずに版を彫ることができる。
数値データはイラストレータのような日常的なアプリケーションからも送れるし、
ちょっとした工夫をすれば、Processingのようにコードから直接生成することもできる。

現在は、直接法のドライポイントのみだが、
プログラムを活用すれば、人の手では困難な点描のみの版画や、一筆書きの版画、さらにはメゾチントにも応用できる。
エッチングのような間接法にもさまざまな可能性がありそうだ。

しかし版を彫ることは、版画の片側でしかない。
その版をどのようにして刷るか、そこには紙やインクなどの素材と手技や道具が深く関与する。

顕微鏡で版を拡大してみると、ニードルの入りや速度で彫られた溝の様子は大きく異なるし、
さらに紙を拡大すると、インクと繊維が深く絡みあっている。

情報と物質とそのあいだにあるものは、媒質=メディアである。
メディア版画とは、道具や技法にこだわる版画がそもそも持っている、メディア的な本性を拡大する。

かつて情報と物質のあいだには何もなかった。
なぜなら、情報とは物質であり、物質とは情報であったからである。
しかしデジタルメディアのメタ性が、その間にインターフェイスというメディアをつくり出した。

メディア版画とは、情報と物質のインターフェイス・デザインである。

 



[出展プロフィール]

多摩美術大学メディア芸術コースメディアラボ(担当:久保田晃弘・三上晴子)では、メディアアート/バイオアート/サウンドアート/クリエイティブ・コーディング/デジタル・アーキテクチャー/インタラクティヴ・プロダクト/ウェアラブル/フードデザインなど幅広く表現し、宇宙から深海まで、細胞から衣食住までを作品化すること念頭において、日々研究制作を行っている。最近の主な活動としては、ハックの精神で創造するためのスペース;hackerspace@tamabiの運営や、多摩美術大学×東京大学「ARTSAT:衛星芸術プロジェクト」、アキバタマビ21特別展「BIOART.JP ー バイオメディア・アート展」の開催、サウンドアートの展覧会「振動と反復 ー 多摩美のサウンドアート2013」(八王子市芸術文化会館)の企画運営、「Red Bull Curates Canvas Cooler Tokyo」(3331 Arts Chiyoda)への参加などがあげられる。

www.idd.tamabi.ac.jp/art

時里 充

1990年兵庫県生まれ、2010年岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー、2012年多摩美術大学卒業。カメラや画面に関する実験と観察を行ない、それを元に作品を制作発表している。主な展覧会に、「照準と流出」-AとBとA’- (ASK?、東京、2012土居下太意との二人展)、「Extended Senses 3rd」(alt space loop、Seoul、2012)、「いま、映像でしゃべること?」(渋谷ヒカリエ8/ COURT、 2013)など。

後藤寛敬

多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース。目に見えない何かを可視化したいというコンセプトのもと制作に取り組む。同コースの卒業制作では福島で計測した放射線量を可視化する作品を制作した。

山口 崇洋

2009年、多摩美術大学大学院修了。学部時代からサウンド&ソフトウェアアート研究室に所属し、久保田晃弘教授に師事。大学院進学後も同研究室に所属し、メディア・アートを研究/制作する。修了制作の《Urbanized Typeface》は学生CGコンテストにて最優秀賞、文化庁メディア芸術祭にて審査委員推薦作品を受賞し、国内外で多数展示に参加した。現在はyang02という作家名で活動している。

久保田晃弘

1960年生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース教授。JAXA宇宙科学研究所学際科学研究系客員教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了/工学博士。衛星芸術(ARTSAT.JP)、バイオアート(BIOART.JP)、デジタル・ファブリケーション、自作楽器によるサウンド・パフォーマンス(hemokosa.com)など、さまざまな領域を横断・結合するハイブリッドな創作の世界を開拓中。


[主な作品]

tokisato
時里 充「s2p2s_r」2013
goto
後藤寛敬「福島の形相」2014
yamaguchi
山口崇洋「Typeface」2009
akihiro_kubota
久保田晃弘「素数版画」2011