4月17日に、東京藝術大学の講義「ジェネラティブデザイン」との連動レクチャーシリーズの第一回が行われ、漆芸家の土岐謙次さんに来ていただきました。
「漆とデジタルデザインが出会うとき」というタイトルで始まったレクチャー。
土岐さんは、数理モデル(数式を3次元グラフとして可視化したもの)そのものをアートの対象にした杉本博司の「観念の形」を引用して、情報そのものの形・物質化のあり方への興味について話します。
杉本博司『観念の形』
同時に漆芸家という立場から、日本の伝統的なマテリアルとしての漆の持つ存在感に対する探求も行います。「捨てられないかたち」では、スーパーなどで大量生産、消費されるアノニマスなプラスチック容器を型取りし、まったく同じ形をした漆塗りの器に変換することで、漆そのものの持つ力をアイロニカルに表現しました。
捨てられないかたち
Sainsbury’s Organic Mango x4
イギリスのスーパーで購入したマンゴーのトレイの石膏型による脱乾漆・ 漆仕上げ
180mm x 150mm x 40mm
2006
土岐さんの創作に対するこの二つの興味が絡み合った結果、3Dモデリングで数理的に制作した形状を漆で仕上げるという表現に至ります
。
七宝紋胎乾漆透器
レクチャーでは、七宝紋という日本を始め世界中で昔から使われてきた円形が重なった模様を、3Dモデルで制作した様々な器の形状にフィットさせるプログラムを実際にデモンストレーションしてくださいました。
プログラムの画面に、手書きでメモ。ここでもデジタルとアナログの境界があいまいに。
デジタルデザインとデジタルファブリケーション(レーザーカッターや3Dプリンタ)によって厳密に数理的な形状を作り、そこに長い時間をかけて漆を重ね、磨いていくことで現れるマテリアリティーが加わることで、手仕事とデジタル技術が溶け合った新しい工芸のあり方を提示する土岐さん。是非展覧会で実際の作品をご覧ください。
土岐さんは、マテリアライジング展会期中に漆ワークショップも開催予定。詳細は追って!