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本作は、単一素材から様々な素材感や現象を創出するマテリアライゼーションの初期実
験的な試みを、藤木のキャラクターである「キャスト」に適用したものから数点をピックアッ
プしたものです。加えて、立体表面の凸凹感を直接ペイントできるソフトウェアもセレク
トしています。マテリライゼーション研究は、独立行政法人科学技術振興機構さきがけの
助成を受けているものです。また、凸凹感ペイントソフトウェアは、東京芸術大学映像研
究科藤幡正樹教授の科学研究費補助金(22242007)「描画過程マトリクス」による描画行
為の創造性研究」の助成を受け開発したものです。特に、開発に際し、小町谷圭さんには
多大なるご助言をいただきました。
私は、現在、単一素材から様々な素材感や現象を創出するマテリアライゼーションの研究を行っています。
マテリアライゼーションは、情報から物質を変換する、その“物理”が重要となります。それは見えない“原子”を作ること、ともいえるでしょう。しかし、その物理は自身の解釈・主観を伴ったものという意味では、無機質な物理ではなく有機的なもの、むしろ、自身の物理といえるかもしれません。そのような意味で、この研究は表層的な表現の研究のみならず、“私”をひとつの例とした「存在感」の研究ととらえています。ところで、仮想世界は理想的な世界を構築できる一方で、現実世界は様々な制限がつきまといます。例えば、重力とか、照明とか。つまり、自身の物理といっても、そのような現実世界の制約を伴うことになります。しかし、その現実世界の制約を考慮するからこそリアリティあるマテリアライゼーションを創出できると私は信じています。また、現実世界の制約に加えて、私は「単一素材」という制約を自ら設けています。この制約により、現実世界の物理による素材感・現象から距離を置き、現実におけるもう一つの非現実な(自身の)物理の存在が明確になると考えています。3Dプリンタは現実と仮想を繋ぐインタフェースです。そして、そこから出力された造形物は、均一に万遍なく自身の物理が詰まった造形物です。一方で、気になっているところもあります。現存する3Dプリンタは解像度の概念が伴う点で離散的です。どうも、私はそこに“私”が切り刻まれたような感覚を覚えてしまいます。ただ、自身の物理の確認をとるには今のところそれで十分です。つまり、その工程は実験であり、出力は検証と私は捉えています。もし、私の考えで出力した立体物を作品とするなら、私の場合、3Dプリンタから見直さなければならないかもしれません。
1978年生まれ。博士(芸術工学)
科学技術振興機構さきがけ研究員、東京藝術大学JST研究員、武蔵野美術大学非常勤講師。表現と原理の関係から、人間と物理の法則を探る、あるいは、それらの新たな関係性を築く研究をしている。現在は、単一素材から様々な素材感や現象を創出するマテリアライゼーションの研究を行っている。
「ゲームキョウカイ」
ハードの境を越え、さまざまなゲーム機を横断しているかのように楽しむひとつのゲームである。また、様々なゲームの境界をシームレスに繋ぐ試みでもある。ここでの境界とは、物理的な境界のみならず、認知や社会の境界も含まれる。