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Michael Hansmeyer + Benjamin Dillenburger 『デジタルグロテスク』-3分の1模型-

かつてレンガと石が果たしていた役割は今日ではビットと粒子が担っている。情報工学は建築、生物学、工学を統合し自然と人工の新たな関係を成立させる可能性を秘めている。自然界の仕組みを模した生成プロセスにより、かつては描出することも想像もできなかった一連の形体言語を表現できるようになった。このようにして生成された建築物は何百万もの相互に干渉し合う記号的要素で構成されており、それらは仮想空間上に散らばる情報の粒子ともいえる。

デジタルグロテスクは自然と人工、混沌と秩序の間を彷徨いながら形体を探し出基本的な図形の分割や生成といった操作をすることで、 面と構造が一体となった極めて装飾的な「なにか」を形成する。この純粋にアルゴリズムのみにより生成された形体は、直接参照できるような様式はないが既存のいくつかの建築様式と朧げながら共鳴している。どの様式にも嵌らないのだが、グロテスクであることには変わりない。

(訳者: 吉田 博則)


 

[essay: 情報と物質とそのあいだ]

“レンガからビットへ – アーキテクチュアルシンセシス( 建築的統合) “

近年にみられる情報技術の発展はコンピュータ支援による建築の新しい時代 の到来を示唆している。コンピューテーショナルデザインとデジタルファブ リーケーションはという2 つのコンセプトは、ともに粒子要素の考え方によ って進化した。コンピュータを用いることで無数の抽象的な幾何学的要素を 用いて建築全体を構成することが可能となった。3D プリンタを使用するこ とで無数の材料の粒子から建築部品を形成することができる。

デザイン:形状の情報化
粒子要素における重要な考え方は建築の解像度に対する概念である。現在の コンピュータの計算能力は、建築的なスケールにおける人間の可視域 の限界を超えた要素の密度を可能とする。コンピューテーショナルデザインの方法を用いることで繰り返し、モジュール化、あるいは自己相似性による 圧縮を用いることなく、膨大な粒子密度で描写することが可能となる。

ファブリケーション面:マテリアルの情報化
これらの仮想空間上の形状は積層法を用いることでその形状が持つ情報をほ ぼ忠実に現実空間においても再現ことができる。顕微鏡でしか見えないほど 小さいレベルでは、材料を置くか否かのふたつの選択によって表される。 個々の粒子が固定されるか否かで形体が形成されるとするならば、そこには膨大な形体がプリントされる前の砂の中に埋まっている。マテリアルはメッ セージを送るための媒体であり、形体がメッセージである。コンピューテーショナルデザインと積層法というふたつの潜在的な可能性を 併用することで建築デザインのプロセス全体に大きな変革を起こしうる。第 一に、建築を真に三次元でつくることができるようになる。もはや、二次元 の平面図や立面図、または施工図面さえ必要としないのだ。デザインした形を後処理することなくそのままプリントすることができる。それゆえ、三次 元を離れることなく設計することが可能となる。第二に、複雑さがコストに影響を与えないため、もはや簡潔さを追求する必要がなくなる。このことよ り、ひとつひとつの要素に対して無限に異なる表現をすることや、より豊かに表現することを可能にした。最後に、デザインとファブリーケーションの いずれの過程も別々に費用を課さないため、これらの技術はマスカスタマイゼーションと親和性が高い。

合理性の再定義
デジタル化された構築手法は建築を高次元で差別化する。まず局地的な条件 に基づいて個々の建築的部品の機能性を最大化することができる。また建築 全体をコンテクストや環境に応じさせることで、極めて高い独自性を発揮さ せることも可能だ。そしてそれぞれの建築要素の構成もアルゴリズムで生成 することで、今まで体験したことない空間や感覚をもたらす。構造と面は一 体となった構造的装飾を形成する。建築を構成するこのような表現手法はあ らゆるスケールで立ち現れてくる。それらは我々に発見され、実際にこの世 に生み出されることを待ち望んでいる状態なのだ。アーキテクチュアルシン触知覚セシスの分野の門は開かれた。新しいマテリアリティは統合され、従来のマ テリアリティは粉砕されるだろう。
(translated by Yuko Ishizu)

 



[略歴] (2013/06)

マイケル・ハンスマイヤー+ベンジャミン・ディレンバーガー:スイスをベースとして、建築におけるコンピュテーショナルデザインを先端的に実践する建築家ユニット。ともにスタジオマスターとしてスイス連邦工科大学にて教鞭を執る。

2011年クァンジュデザインビエンナーレ(韓国)、ロッテルダム国際建築ビエンナーレ(オランダ)など出展多数。

Michael Hansmeyer and Benjamin Dillenburger are two architects specialized in the field of computational design. Theyare both lecturers at Swiss Federal Institute of Technology (ETH) in Zurich. They have published widely and have exhibited at numerous galleries and exhibitions, including the Gwangju Design Biennale 2011 and the International Architecture Biennale Rotterdam.

http://www.michael-hansmeyer.com

http://benjamin-dillenburger.com


[主な作品]

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THE SIXTH ORDER : MICHAEL HANSMEYER

The Sixth Order involves the development a column order based on subdivision processes. It explores how a procedural approach to form can define and embellish this column order with an elaborate system of ornament. This approach inherently shifts the focus from a single object to a family of objects: endless permutations of a theme can be generated. For the Gwangju Biennale, a single process was used to generate four individual columns. The resulting columns have not a single surface or motif in common, yet due to their shared constituent process, they form a coherent group.

Image credits: Kyungsub Shin

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STADTIGEL : BENJAMIN DILLENBURGER / KAISERSROT

The Stadtigel It is a city on a sphere – not necessarily a global city – rather a city globe. It is endless, or better, beginningless. There is neither periphery nor center. The city’s openness is simultaneously based on its seclusion. Once within one can never leave again. The city has a specific form; its physical presence is obvious.

Nevertheless, the city can never be experienced in its totality. There is no outside vantage point from which all of the 80 square meters of city surface can be coherently perceived.

Image credits: Benjamin Dillenburger / Kaisersrot