[ステートメント]
この展覧会は昨年6 月に東京藝術大学大学美術館陳列館で開催された「マテリアライジング展」の第二回にあたる展示です。
情報技術や情報環境が日常化し、3Dプリンタやレーザー加工機などのコンピュータ制御による造形技術が表現の領域に広く及んでいる現在、 情報と物質をめぐる新たな感覚が生まれてきています。
本年も昨年に引き続き、さまざまな領域から出展者をお招きすることによって、情報と物質そしてその周辺に対する思索をあらゆる視座から行うことを目的としています。また、昨年はデジタルテクノロジーを駆使した作家及び研究者にのみ焦点を当てたのに対し、本年は、デジタルテクノロジーを展覧会の主眼としながらも、そこにとどまらず、派生的かつ拡大的な解釈で出展者をお招きし、より幅広いマテリアライジング展としての文脈形成を試みています。
本展の基本的構成は、作品及びそのキャプション、そして各出展者による「情報と物質とそのあいだ」についてのエッセイからなります。作品とエッセイの関係性、そして各出展者のあいだにある差に目を向けながら、技術的な驚きだけじゃない、デジタルが一般化した時代における創造の可能性、そして新たな表現と意味の発見へとつながっていくことを願っています。– マテリアライジング展企画室 砂山太一 2014年7月
第一回展の開催を経て、「マテリアライジング展」は、デジタルファブリケーション技術を主眼とした展覧会として一般に認知された。また同時に 第一回展から第二回展の1年の間に3Dプリンタを使った美術的表現やデザインの現場への適応例が増えてきていた。そのように1年という短い間であったものの、社会・文化に多少なりとも「マテリアライジング展 I」が及ぼした影響が見られた。
このような状況の中、第一回展とはまた違った角度で、テクノロジーとアートについてのより批評性・現在性の高い展覧会を目指して第二回展は企画された。
「マテリアライジング展」が文化プラットフォームとして成立するためには、テクノロジーの発展に依拠したシリーズ展ではなく、毎回違う角度・手法によってよりアクチュアルな文化的リテラシーを高めて行く必要性が求められた。そこで、より新たな批評性の形成を意図して、普段デジタルテクノロジーとは直接的な関係性を持っていない作家に、デジタル・テクノロジーを使い「マテリアライジング展」が掲げる「情報と物質とそのあいだ」について独自の解釈でアプローチしてもらうことをお願いした。
第一回展がコンピューテーションやデジタルファブリケーションといったデジタルメディアに特化した作家を中心に企画されていたのに対し、マテリアライジング展 II の特色としては「それ以外」、普段デジタルテクノロジーとは直接的な関係性を持っていない作家が半分を占めている。
あらゆる解釈の幅を、多様に、ある意味雑多に、並置することは第一回展からの基本理念でもある。その”雑多さ”が、よりダイナミックな議論を生み、新たな文化形成を刺激すること。マテリアライジング展はそこに意味・目的をもつ。
[出展者]
[企画] 砂山太一 松浦廣樹 大野友資 富井雄太郎
[企画協力] 金田充弘 松井茂 豊田啓介 森山貴之 木内俊克 舘知宏 永田康祐
[会場構成] 酒井真樹 福山格
[スタッフ] 戸石晃史 中山和典
[主催] マテリアライジング展企画室+東京藝術大学 金田充弘研究室
[協力] 東京藝術大学 芸術情報センター
[会場構成協力] 株式会社丹青社
[広報協力] 株式会社建報社