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東洋大学 藤村龍至研究室 『google chair』

“google”の画像検索を使用し、上位1位から100位までの椅子に関する画像から椅子の構成要素を「要素数」、「要素の形」、「角の扱い」として抽出し、類型化する。そこからそれぞれの類型を模型にしつつ、構成要素を加算しながらひとつの統合形を構成する。

日本語を含む、世界9カ国の主要言語から同様の方法で統合形を構成し、最後にグローバルな統合形を構成する。趣味的でなくデータベース的であり、彫塑的でなく構成的であり、平均的ではなく加算的な、人々の「無意識の中にある椅子のイメージ」を物質化する試みである。


 

[essay: 情報と物質とそのあいだ]

“グーグル以後の建築――世論を「物質化」せよ”

– 東洋大学 藤村龍至研究室

グーグル以後、テレビで発信された情報への反応が可視化されたり、選挙前に投票後の議席数を当てたりというように、情報技術によって世論はかなりの程度正確に計測できるようになってきた。
かつて情報技術が普及し始めた1995年頃から、妹島和世と西沢立衛が「なかへち美術館」 (1996)において複雑な凹凸のある平屋のボリュームに対し、ガラス、スチールパネル、コンクリートからなる立面を同じ割り付け幅とし、全体にわたってフィルムを貼付けて様々な素材を等価に扱う試みを行なったり、青木淳が「ルイ・ヴィトン名古屋ビル」(1999) においてガラスにプリントしたグリッドパターンを二重に重ね、そこから発生させた鑑賞縞=モアレによって「壁の厚みを消す」試みを行ったりというように、スクリーン上では表現しにくいスケールやマテリアリティこそが建築家ならではの表現であるという考え方が出てくるようになる。
こうした動きと時期を同じくして、現代アートの領域では村上隆が「スーパーフラット」というキーワードを出していた。日本画やアニメをモチーフにした目玉などの要素を画面全体に鏤め、イラストレータのベジェ曲線を駆使して描かれる構図で描かれる作品群に対し、批評家の東浩紀は共通する特徴を認め、「カメラアイがない」「奥行きがない」として言語化し、自身の展開する「データベース・モデル」を通じてこれらを論じた。
あれから10年以上が経ち、情報技術が日常生活に実際に浸透してくると、情報のありようを示すために物質の物質性が過剰に強調されたり、複雑な計算による造形を重視することもなくなってくる。加えてグーグル以後、情報技術によって複雑な世論をかなりの程度正確に計測できるようになってきた現在、そして実際に人口減少や少子高齢化に伴う都市の縮小が議論されるようになってくると、建築にとって物質は「情報」という曖昧な概念のありようを示すためのものというよりも、見えるようになった世論を可視化し、解決案を提示することで世論を再生産するためのものへとその役割を転換しつつあると言えるだろう。
世論をどう計測し、そこで集められた多様な意志をどう分類し、どう再構成(=マテリアライジング)するか。グーグル以後のアーキテクトたちに今求められていることは、その手法を示すことだ。

 



[出展プロフィール]

2010年4月に設立された建築意匠論、都市計画理論を専門とする研究室。建築構成論をベースに都市形態論、設計方法論、公共施設マネジメント論、都市開発論等を展開。1995年以後の都市設計理論を主題としてリサーチ「THE 2.0 CITY」を『アーキテクチャとクラウド』誌上にて、「列島改造論2.0」を『思想地図β3』に発表。「CITY 2.0」展(EYE OF GYRE, 2010)などにおいて会場構成、ワークショップ運営などに関わり磯崎新の「海市」の発展形として「海市2.0」を展開。東京都内のほか、東京湾岸、成田空港周辺、青森、神戸、沖縄などにてフィールドワークを行ない、現代都市の批評を行なう。

aar.art-it.asia/u/official35

藤村龍至

1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所主宰。2010年より東洋大学専任講師。主な建築作品に「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」(2014)「家の家」(2012)「BUILDING K」(2008)。近年は建築設計やその教育、批評に加え、公共施設の老朽化と財政問題の解決を図るシティマネジメントや、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。


[主な作品]

fujimura
藤村龍至/TEAM ROUNDABOUT「海市2.0」2010