(撮影:来田猛)
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Street Viewは,米Google社が提供する同名のサービスとは関係がありませんが,都市様相を可視化するという点では同じです.Street Viewは街路をネットワーク見なし,その位相関係から街路のさまざまな特徴を明らかにする解析ソフトウェアです.
ある2点間の移動にかかる時間を距離に見立てたものを「時間距離」と呼び,時間距離に基づき,基点から他のすべての地点までの角度を保存し等時間を表す同心円状に変形させたものを「時間変形地図」と呼びます(グラフィックデザイナー・杉浦康平氏の作図方法を踏襲).今回展示するものは,京都がどのような時間的,空間的広がりを見せているか,ある出発地点から目的まで移動する時に時々刻々と変化する様子を表す「時間変形地図」です.また,6枚のプリントアウトは京都市街地全体を解析したもので,京都の街路システムであるグリッドと一方通行,また,都市の時間距離を縮めるデバイスとしてどのように作用する鉄道,バスなどの交通網が,都市の賑わいや,施設が有する圏域等にどのような影響を与えている
か分析したものです.
「都市をはかる」
– hclab.
都市の原型には様々あります.私たちの先人は山河などの地理的,空間的制約の上で,社会生活や,居住の場として都市を「図り」,円滑に機能するよう都市を「計り」,計画の合意を形成するために都市を「諮り」,建設のために都市を「測り」,運営のために都市を「量り」ながら,都市をつくりあげてきました.時に戦術として都市の攻略を「謀る」…,場面もあったかもしれません.
都市は不断の「はかる」行為によって支え続けられています.都市を「はかる」行為は,1950年代アメリカの地理学界で起こった計量革命以降,「点」・「線」・「面」等都市の幾何学的側面に着目することで飛躍的に発達し,その結果,都市現象を正確に把握し,予測することが可能となってきました.この過程でコンピュータの発達が大きな役割を果たしてきたことは想像に難くありません.今日では,膨大な種類と量のデータを集計し,「はかる」ことで,都市現象をより正確に予測しながら問題点を抽出し,都市計画に役立てることも可能となってきています.
時として,人口分布,バスや鉄道などの交通網の敷設計画等の量的な変化が,私たちの生活環境,都市機能,或は犯罪の発生頻度等の質的な変化を引き起こすことがあります.つまり,これらの量的な変化を正確に把握できれば,予期せぬ機能不全を事前に把握でき回避できる可能性があります.また,自動車がエアロダイナミクスの観点から空気抵抗を低減する形態を追求してデザインされ,美しく,愛される自動車となることがあるように,都市の諸量を把握しながらデザインを追求することで,都市や建築も愛着や快適性といった「質」を獲得できるかもしれません.そういった問題意識に立脚し,量的変化と質的変化の関係を把握するというという立場から,hclab.は,これまで見えにくかった都市の様相を明らかにし,都市・建築をマテリアライジングするため「デザインの下敷き」をつくることを目的に研究・開発を続けています.
◉[III]出展者プロフィール
hclab.
國廣純子、新井崇俊、市川創太を中心とする都市研究室。タウンマネージメント、都市解析、都市・建築設計などに携わりながら、デザインの下敷きに なりえる都市・建築の構造や潜在価値を探るために、評価・設計支援ソフトウェアを独自開発している。都市工学を現実のデザインにアプライすべく、 ユーティライズを行い、形の特性、空間情報と統計情報などとのブリッジを得意とする。ICC都市ソラリス展、杉浦康平・時間地図デジタイズ プロジェクトなど。
◉主な作品
[Street View]
インタラクティヴに操作しながら都市の街路網を評価することのできるソフトウェア。
交差点媒介度、街路勾配負荷などを考慮した時間距離、距離の公平度、圏域などを計測することができる。各指標を瞬時にビジュアライズし、施設配置計画、街路の新規計画、災害時の街路封鎖の影響、など都市計画やマネージメントに使用が可能である。